三月。朝の現場に立つと、昨日までとは違う空気が頬に触れる。
冷たさの中に、かすかな温もり。足元の土を見ると、小さな芽がひとつ、地面を割って顔を出していた。
家づくりも、同じかもしれない。
目には見えない地中で、根が張り、水を吸い、栄養を蓄える。それは長い時間、静かに続く営みだ。やがてその力が溢れて、芽となり、花となり、実となる。
ご家族の「想い」もまた、すぐには形にならない。何度も対話を重ね、土地を歩き、素材に触れ、少しずつ輪郭が見えてくる。その過程こそが、暮らしづくりの本質なのだと思う。
春が来るたびに、想う。焦らなくていい、と。
土の中で静かに育つものこそ、強く、美しい。